なぜスノーピークは、テントメーカーなのに企業研修を売れるのか?

勝ちパターン企業研究

スノーピークと聞いて、まず思い浮かぶのはテントや焚火台などのキャンプ用品ではないでしょうか。

ところが、スノーピークグループには企業向けの研修事業があります。チームでテントを設営し、自然の中で対話し、焚火を囲んで語り合う。キャンプで生まれる体験を、チームビルディングや組織開発に生かす研修です。

テントメーカーと企業研修。一見すると離れた事業に見えますが、その成り立ちを追うと、両者は一本の線でつながっています。

きっかけは、スノーピークの外にあった

この事業を考えるうえで見逃せないのが、最初の着想がスノーピーク社内から生まれたものではないことです。

きっかけをつくったのは、後にスノーピークビジネスソリューションズの代表となる村瀬亮氏でした。当時、村瀬氏が経営していたハーティスシステムアンドコンサルティングは、企業のIT導入支援などを手がけていました。

村瀬氏自身はスノーピークのユーザーでもあり、ユーザーイベントに参加する中で、キャンプには企業の組織づくりにも使える価値があるのではないかと考えます。

キャンプでは、誰かと協力してテントを立て、食事をつくり、焚火を囲んで話をします。普段の職場とは違う環境だからこそ、いつもとは違う会話や関係が生まれることもあります。

村瀬氏は、そこに法人向けサービスの可能性を見つけました。

その提案をきっかけに、2016年7月、スノーピークと共同出資でスノーピークビジネスソリューションズが設立され、同年9月には「インタラクティビジョン®」の提供を開始します。その後、2019年にはハーティスシステムアンドコンサルティングがスノーピークの完全子会社となり、スノーピークビジネスソリューションズと組織統合しました。

「キャンプ用品」ではなく「キャンプで起きていること」を売る

ここで面白いのは、新しい技術や商品を一から開発したわけではないことです。

スノーピークが以前から提供していたのは、もちろんキャンプ用品です。ただ、利用者の側から見ると、その道具を使った先には「人と人がつながる時間」がありました。

キャンプ用品として見れば、お客様はキャンパーです。一方、「人と人の関係をつくる体験」と捉えれば、社員同士のコミュニケーションやチームづくりに課題を持つ企業もお客様になります。

同じ強みでも、何を価値として切り出すかによって、売る相手が変わったわけです。

企業が買える研修プログラムに変えた

ただ、キャンプには組織づくりに役立つ面があります、と伝えるだけでは事業にはなりません。法人が購入できるサービスとして形にする必要があります。

現在、スノーピークビジネスソリューションズでは、アウトドアを活用した複数の研修プログラムを提供しています。そのひとつが「チームテント」です。

参加者はコミュニケーションについて学んだ後、チームごとに作戦会議を行い、協力してテント設営に挑戦します。テントを立てる過程では、情報をどう共有するか、誰がどう動くか、意見の違いをどう調整するかといった、普段の仕事にも通じる場面が自然に生まれます。最後に体験を振り返り、そこで得た気づきを言葉にします。

新入社員向けのプログラムでは、宿泊テントの設営や食を通したワーク、焚火トークなども組み込まれています。

一般的な座学研修とは入口が違います。スノーピークは、自社が長年扱ってきたテントや焚火、自然の中での時間そのものを研修プログラムの中に組み込みました。

他の研修会社が同じことをしようとすれば、道具をそろえるだけでなく、テント設営やアウトドアでの場づくり、安全面を含めた運営の知識も必要になります。スノーピークにとっては、それらは新規事業のために一から用意したものではありませんでした。

既に持っていたものを組み合わせ直したことで、他社とは違う研修の売り方ができたと考えられます。

研修を「どこで提供するか」まで仕組みにした

アウトドア研修には、もうひとつ条件があります。実施する場所です。

毎回会場を探し、その都度ゼロから実施環境を整えていては、提供できる数にも限界があります。

スノーピークビジネスソリューションズは、宿泊施設やアウトドア空間を持つ事業者とのアライアンスを展開し、「CAMPING OFFICE」の研修を実施できる場所を広げています。2026年9月時点で、公式サイトには提携施設として11拠点が掲載されています。

自社ですべての研修施設を持つのではなく、各地の施設と組むことで、同じ考え方のプログラムを複数の場所で提供できるようにしたのです。

研修内容だけでなく、提供する場所まで含めて繰り返せる形にしたことが、この事業を広げるうえで重要なポイントでした。

スノーピークがつくった新しい仕組み

この事例を振り返ると、最初に変わったのは商品ではなく、スノーピークが持っていた価値の見方でした。

キャンプ用品をつくる会社が持っていた「人と人がつながるキャンプ体験」を、企業の組織づくりという別の市場から見直す。そこから法人向けの研修プログラムをつくり、さらに提携施設を使って各地で提供できる体制へと広げていきました。

しかも、その可能性を最初に見つけたのは、スノーピークの社員ではなく、スノーピークを利用していた村瀬氏です。

企業が長く続けていることほど、社内では当たり前になっていきます。ところが、お客様から見ると、その「当たり前」が他社にはない価値に見えていることがあります。

スノーピークの企業研修は、まったく新しい強みを手に入れて生まれた事業ではありません。もともとあった強みを別の顧客から見直し、商品にし、繰り返し提供できる形にした。

テントメーカーが企業研修を売れる理由は、その流れの中にありました。

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