商談後の「どうだった?」が、部下を黙らせている

今日、部下に伝えたい営業ノウハウ

商談同行の帰り道。上司が部下に「今日の商談、どうだった?」と聞く。部下は少し考えて、「良かったと思います」と答える。「そうだね。でも、もう少しお客様の話を聞いたほうがよかったかな」「はい。次は気をつけます」営業の現場では、どこにでもありそうな会話です。上司は振り返りのつもりで聞いていますし、部下も答えようとしています。それでも会話は「良かった」「次は気をつける」で終わってしまいます。問題は、部下が何も考えていないことではないのかもしれません。「どうだった?」と突然聞かれても、何から話せばいいのか分からない。さらに相手が上司であれば、「正しい答えを求められている」と感じることもあります。

■振り返りが「答え合わせ」になっていないか

上司は商談を見ながら、気になったことがいくつもあります。「あそこはもっと聞いてほしかった」「提案に入るのが少し早かった」「あの質問は良かった」。だから商談が終わると、つい確認したくなります。「なんで、あそこで提案したの?」悪気はなくても、部下には「提案するのが早かったよね?」と聞こえることがあります。すると部下は、自分が商談中に何を見て、どう考えたのかを振り返るよりも、「上司が求めている正解は何だろう」と考え始めます。「まだ早かったです」「次から気をつけます」これでは会話は続きません。質問そのものよりも、聞かれた側が「評価されている」と感じた瞬間に、振り返りが答え合わせに変わってしまうことがあります。

■最初の一言の前に、少し待つ

商談が終わった直後は、上司も部下もまだ商談の余音の中にいます。そんなとき、すぐに「どうだった?」と聞かれると、部下は考える前に答えなければなりません。たとえば帰り道、少し歩いてから「さっきの商談、まず自分ではどんな感じだった?」と聞く。質問したあとも、すぐに言葉を足さずに少し待ってみる。部下が「うーん……」と考えていると、つい上司は助け船を出したくなります。「提案、ちょっと早かったと思わない?」その瞬間、部下の振り返りは上司の答えに引っ張られます。数秒の沈黙は、会話が止まっている時間ではなく、部下が商談を頭の中でもう一度たどっている時間なのかもしれません。

■「どう思った?」より先に、起きたことをたどる

振り返りでは、いきなり評価を求めないほうが話しやすいこともあります。「良かった?」「悪かった?」ではなく、まず商談で実際に起きたことを一緒にたどってみる。「最初、お客様はどんな話をしていたっけ?」「途中から、どの話が一番長くなった?」「最後、お客様は何と言っていた?」こうした会話なら、正解を当てる必要がありません。部下は自分が見聴きしたことを、そのまま話せます。「最初は価格の話でしたけど、途中から導入後の運用の話が長かったです」ここまで出てくると、次の会話がしやすくなります。「そのとき、どう感じてた?」事実を思い出したあとなら、自分の考えも話しやすくなります。いきなり「どうだった?」と感想を求めるよりも、「事実→自分がどう感じたか」という順番のほうが、部下自身の言葉が出てくることがあります。

■上司の答えは、最後でも遅くない

経験のある上司ほど、商談が終わった時点で改善点が見えているものです。だから早く伝えたくなります。ただ、最初に上司が答えを言ってしまうと、その後の会話はその答えを前提に進みます。「今日はヒアリングが足りなかったね」そう言われたあとに「自分ではどう思う?」と聞かれても、「そうですね。足りなかったと思います」と答えるのは自然なことです。順番を逆にすると、違う話が出てくるかもしれません。まず、部下が見た事実を聞く。次に、本人がどう感じたかを聞く。そして、次に同じ場面があったらどうするかを聞く。上司が気づいたことを伝えるのは、そのあとです。「私はあの場面をこう見ていたよ」上司の意見が「正解」ではなく、ひとつの見方として会話に入ってくると、部下も自分の考えと比べやすくなります。

■商談後の数分が、考える時間になる

「どうだった?」という言葉自体が悪いわけではありません。ただ、その一言のあとにすぐ評価が続けば、部下にとっては振り返りではなく、採点の時間になってしまうことがあります。少し待つ。まず事実をたどる。部下の考えが出る前に、上司が答えを言わない。特別な面談を用意しなくても、商談同行の帰り道や1on1の数分でできることです。部下がよく話す上司は、たくさん質問しているとは限りません。答えが出てくるまで、待てる人なのかもしれません。

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